1.湖沼生態系の構造を決定する生物間相互作用に関する研究

湖沼生態系内では様々なプランクトン種の間でケミカルコミュニケーション(化学物質を介する情報伝達)が行われており、これが種間競争、捕食‐被食関係を変化させることで、プランクトン群集の構成にも影響を与えています。私たちはこれまでの研究で、情報化学物質のみではなく、物理的刺激や水温など、様々な至近要因が複合的に群集に働いていることを明らかにしてきました

2.人間活動由来の化学物質による水圏生態系への影響の評価

湖沼に流入する農薬が生物群集に及ぼす影響には、急性(慢性)毒性試験による個体レベルでの評価が行われています(例えば、OECD Guidelines for Testing of Chemicals)。しかし、これらの試験ではそれぞれ単一の種に対する毒性が評価されるに過ぎず、その結果から複雑な食物網からなる生物群集への影響を評価することは困難です。

近年の研究から、微量有害化学物質が生物間相互作用を撹乱することが発見され、関心を集めています(Lürling and Scheffer, 2007)。その例として、野外生物の表現型の可塑性に及ぼす人為化学物質の影響が挙げられます。Daphnia (ミジンコ類)では捕食者が誘因する形態変化(特定の捕食者の存在下でのみ誘導される)が殺虫剤(カルバリル、BPMC;カーバメイト系やtemephosdiazinon;有機リン系)によって誘導されます。また、このような生物間相互作用の撹乱は、通常の毒性試験では影響が検出できないような低濃度での曝露によって引き起こされてしまいます(Hanazato, 2001)動物プランクトン群集は湖沼の食物網において、エネルギー伝達の面で生産者と高次消費者をつなぐ重要な役割を持つことから、このミジンコに及ぼす殺虫剤の影響は生態系全体に波及すると考えられます。そのため、このような生物間相互作用の撹乱を正確に評価することが今後の課題となります。

3.プランクトンの季節的遷移に関する研究

 上で述べたように、湖沼生態系内では様々なプランクトン種の間でケミカルコミュニケーションが行われており、これが種間競争、捕食‐被食関係を変化させることで、プランクトン群集の構成にも影響を与えています(Lass and Spaak, 2003)。私たちはこの複雑な生物間相互作用を考慮に入れたプランクトン群集変動モデルを構築することを試みています。本研究を進めることで、群集全体の反応を正確に理解することにも繋がると考えています。

4.池の水質浄化に向けた生態学的アプローチ

富山県立大学構内にある太閤池の水質改善(植物プランクトンの大繁殖を抑え、透明度を高める)を目指し、池の生態系構造の理解(野外調査)と生物操作(バイオマニピュレーション)実験を開始しました。これは当研究室の西元宏樹君(専攻科1年生)の修了研究テーマでもあります。